「月刊農学部長」第53号(2022年12月)
「月刊農学部長」第53号(2022年12月)
11月 農作業の運動量はどれくらい?
10月初旬に山大関係者でつくっている「農活クラブ」の稲刈りがありました。今年は春の田植え,夏の草取り,秋の収穫と参加できたので,ちょっと思い入れのあるお米が収穫できました。
昨年の稲刈りの時に,「結構汗をかきながらの作業で,なかなかの運動量があるなー」と感じました。そこで今回は写真のような酸素摂取量の測定装置一式を使って,私自身の農作業運動量を測定してみました。
その結果をまとめたのが下記のグラフです。
写真の様に座ったままの草取りでは,体重1㎏当たりで12.5mlの酸素を摂取していました。一方,稲刈りのように立位と座位を時々繰り返すような作業では16.1mlの酸素を摂取していました。これらの値は,安静時の酸素消費量(3.5ml)のそれぞれ3.6倍および4.6倍に相当します。
農林水産省が報告しているデータでは,それぞれ3倍および4.5倍ですので,素人作業ゆえ無駄な動きが多く,酸素消費量が少し多めになっているのかもしれません。また,これまでに厚生労働省等によって報告されている各種運動のデータも同じグラフに表してみました。
その結果,今回の農作業は“普通歩行”~“ゆっくり走行”の範囲内にあり,軽めのスポーツ(ボウリング,ゴルフ,卓球など)と同等の酸素が消費されていたことになります。1時間の農作業で200~400Kcalぐらいのエネルギー消費は見込めますので,およそ30~60gぐらいの体脂肪が使われた計算になります。日々の活動として習慣化されれば,生活習慣病のリスク回避の手段として十分使えそうです。
ただし,写真のように膝を曲げて,背中を丸めた姿勢が長時間続くのは,一定の筋肉にのみ負担がかかると同時に血流を阻害する可能性があります。また,どう見ても脊柱骨にも悪影響がありそうです。作業の合間に,何かにぶら下がって重力で全身を引き延ばすような運動を取り入れたいところです。もし,退職後に農作業を長時間するようになったら,今は洋服掛けになっている「ぶらさがり健康器」を引っ張り出して,本来の利用方法に戻したいと思っています。