「月刊農学部長」第57号
「月刊農学部長」第57号
3月 卒業?修了式と身近な人工知能(AI)
3月は卒業のシーズンです。上の写真は大学院(修士)修了生を代表して,答辞をりっぱに読み上げた農学系の田中萌菜さんです。実は田中さんは2年前も全卒業生を代表して「答辞」を読み上げました(写真下)。この学生代表の役割は,学部や学科でのローテーションが定められており,卒業生は9年に1回,修了生は6年に1回しか農学系の学生にはチャンスが巡ってきません。その上に本人が6年間(学部4年+院2年),優秀な成績?業績を上げなければいけないわけですから,単純に計算して,1/100(学部定員)x1/36(大学院定員)x1/9x1/6=0.000005となり,20万人に1人の確率になります。偉業かつ奇跡的なタイミングに心から拍手を送ります。
3月末には多くの学校で卒業式が行われましたが,先日ある国立大学で,卒業生代表が「答辞」をOpen AI(公開人工知能)を利用して数分で作成したと公言して話題になりました。次期マイクロソフト社のソフト(ワード&エクセル)には,さらに進化したAI が組み込まれるというニュースも流れています。昨年アメリカの大学で大問題になったようですが,これからはもうオンラインでの単純なレポート課題は出せなくなりそうです。AI の生成物はかなり良質で利用したくなる気持ちもよくわかりますが,思考あるいは感情を整理して文章化するという最も人間らしい作業を放棄してしまうと様々な能力がすぐに退化してしまいそうです。試しに,「農学部長として3月の挨拶を300字でまとめたい」と入力すると,30秒で以下の文章が返ってきました。確かに無難ですべての農学部に応用できそうな内容ですが,自分の考えた文章じゃないのでなかなか覚えられないという欠点に気づきました。
農学部の学生および教職員の皆さまへ:新年度を迎え、私たちの農学部は、引き続きCOVID-19の状況に対応しながら、研究?教育?地域貢献活動を推進していきます。SDGsに貢献するための研究や、地域社会との協働による貢献活動に注力し、農業?食品業界に貢献するため全力で取り組んでまいります。今後ともご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
大学においてAIも組み込まれたDX(デジタルトランスフォーメーション)教育を行うことは,もはや当然のノルマになっているようですが,実はDXの意味を本当に理解して,ちゃんと説明することは容易ではありません。DXに振り回されずに,AIおよびデータを使いこなせる人間になるために,我々もしっかりと勉強しなくてはなりません。