月刊農学部長 第64号
月刊農学部長 第64号
10月 「読書の秋」大学図書館を利用しよう!!
私は特に読書家ではありませんが,小さい時から本を読む習慣はありました。ただ,大学で研究をするようになってからは,「本を読む時間があったら論文を読むべき」という暗示にかかってしまい,出張の移動中ぐらいしか本を手にすることはなくなっていました。10年以上前に,「せっかく隣に大学図書館があるのだから本を読まないのはもったいないなー」と思い始め,毎月2,3冊ずつ本を借りるようになりました。そのペースで読み続けたので,すでに400冊以上読んだことになります。今では,月に一度図書館内をブラブラと歩いて今月の本を探すのが楽しみになっています。そこで読書の秋でもありますので,あまり本を読まないという学生さんに,面白い本の見つけ方についてちょっと私見を述べてみたいと思います。
気になるジャンルがある人は,とにかくその書架にどんな本が並んでいるのかザっと目を通してみてください。書架は7段ぐらいあるので,ついつい上4段ぐらいに目が行きがちですが,下の段も是非眺めてください。結構掘り出し物があります。久々に読むという人は,以前読んだことがあって心に残っている本をもう一度読んでみるといいかもしれません。以前とは違った感想を持つこともあり,読書再開のきっかけになることもあります。あるいは,時節柄ノーベル文学賞に関連する本を読んでみるのもいいかもしれません。私の場合,毎年候補者として名前が挙がった村上春樹氏の本を何度か借りてみましたが,どうも真価がわかりません。自分の読解力の未熟さというか,感性がノーベル文学賞のレベルに全然到達していないことを痛感します。
それでも面白い本を探せないという人には,「面白い本」という本をお勧めします。これは,読書家として有名な実業家?成毛眞氏の書評集です。9つのカテゴリー別に各10冊ほどが紹介されていて約100冊が,それぞれ1~2ページぐらいの文章量で紹介してあります。すべての本が図書館にあるわけではありませんが,30%ぐらいはあると思います。自分の興味のありそうなカテゴリーにおいて紹介されている本を図書館HPの検索サイトを使って検索し,蔵書が確認できたら整理番号を控えて借りに行ってみてください。とても効率よく当たりの本に出合うことができます。私の経験では,伝記的な内容の本はだいたい当たります。偉業を成した人の苦労話とそれを乗り越える過程には,必ず心打たれる場面があります。
最後に,図書館HPの「my Library」に入ると自分がこれまで読んだ本のリストが出てきますが,その中で印象に残っている本,そして多くの人が飽きずに読めるという観点で,以下の3冊を紹介しておきます。まずは秋のうちに,一冊手に取ってみてはいかがでしょう。
1)「ご冗談でしょう、ファインマンさん」R. P. ファインマン著; 大貫昌子訳:1965年に朝永振一郎博士と一緒にノーベル賞を受賞した天才物理学者の自伝です。時には研究以上に,音楽や政治そして教育に情熱を燃やす生き様に本当に圧倒されます。
2)「パンデミック新時代 : 人類の進化とウィルスの謎に迫る」ネイサン?ウルフ著 ; 高橋則明訳:2012年に発刊された著名なウィルス学者の著書ですが,中国奥地を起源とするコウモリを媒介とした未知のウィルスが蔓延することを予言しているような内容です。この本を読むと,数年後にまたコロナ禍のような事態が起こる方が当たり前のような気がしてきます。
3)「オッサンの壁」佐藤千矢子著:ジャーナリストとして第一線を歩み続けた著者の視点が鋭く,「男性が生まれながらに履いている下駄に気づかず,男性優位社会を当たり前のこととして守ろうとする「オッサンの壁」が,多くの人たちの幸せを奪っているのではないだろうか」など,心に刺さるフレーズが満載です。
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