月刊農学部長 第65号
月刊農学部長 第65号
11月 校内でも採れる秋の味覚
これまで秋の味覚として,野生のクルミ(第27号)と干柿(第54号)を紹介しました。最終年の今年はちょっとマニアックですが,学内で採取できる“むかご”と“銀杏”について紹介します。むかごはスーパー等ではほとんど売っていないので,食べたことがないどころか見たこともないという人も多いかと思います。写真のように山芋のツルの節々にできる肉芽です(左写真)。この写真は共育の丘で撮りましたが,意外とキャンパス内の植え込みやフェンスにからまっていたりもします。葉が黄色くなる10-11月に探すと簡単に見つけることができます。自然の山芋を掘り出すのは大変な重労働で素人にはまず無理ですが,むかごなら散歩しながら採取できます。ご飯に混ぜて炊きこむのが最も一般的な料理法ですが,私はただ数分間塩ゆでにして,ビールのつまみにするのが好きです。右写真上のように皮がむけるときれいな緑色になります。味も食感も全く山芋ですので,山芋が好きだという人は是非試してみてください。
ついでに学内で簡単に採取できる銀杏(第27号)の食べ方についてちょっと紹介します。一番ポピュラーなのは茶碗蒸しですが,そんな高度な料理は私には無理なので,そのまま調理してつまみにするのが好きです。使用済みの封筒に数個の銀杏を殻ごと入れ,3分ぐらい電子レンジで加熱すると殻が割れて,宝石のようなおつまみができます(右写真下)。
先日,NHKの“チコちゃんに叱られる”で,銀杏は恐竜が食べてくれたから世界中に広まったという歴史を紹介していました。表皮には強烈な匂いを発する酪酸(ブタン酸)が多く含まれるので,ヒト以外の動物もほとんど食べようとしないそうですが,なぜか恐竜は好んで食べたようです。1~2億年前には,銀杏は恐竜と共に世界中に拡散して,40以上も種類があったそうです。6千6百万年前に,例の巨大隕石がユカタン半島に衝突した出来事の後,恐竜と一緒に衰退していきました。その後,中国の奥地に残った1種類の銀杏が,色が鮮やかで薬効成分もあるということで,ヒトに重宝され世界中に広められたようです。恐竜の化石から銀杏の歴史までわかるとは,考古学ってすごいですよね。
ということで,先月の「読書の秋」の続きで,考古学に興味のある人に,下記の本をお薦めします。
2021年に大変話題になった「土偶を読む」(竹倉史人 著)と今年発刊されたその批判本「土偶を読む を読む」(望月明秀ほか 著)です。人類学者が考古学会に挑戦状を叩きつけて,それを考古学者たちが否定するという構図ですが,素人目にはなかなかいい勝負だと思います。直観としては,クルミやハマグリが土偶(精霊)のモチーフというのには納得しましたが,稲穂や里芋はちょっと無理があるかなと感じました。この論争は今後も続く気配なので,両方とも一気に読んでみると面白いと思います。